今日は、「腎臓病薬物療法トレーニングブック」で勉強した事を記事にしたいと思います。
急性腎不全の病態
数時間から数週間の短い期間で急速に腎機能が低下する病態の事を言います。
腎臓の機能として、
腎機能が低下すると、これらの機能によって障害されて体液の恒常性が保てなくなります。
急性腎不全の診断
- 尿量の低下
- BUN、 CREの上昇
ただし、尿量の低下を伴わない場合も少なくなく、血液検査から診断されることが多いです。
原因による分類
- 腎前性急性腎不全
- 腎(実質)性急性腎不全
- 腎後性急性腎不全
腎前性急性腎不全
腎前性急性腎不全には以下の原因が挙げられます。
- 有効循環血漿量の減少
- 心拍出量の減少
輸入細動脈から流入した血液は、糸球体を通過する際に一定の圧力で濾過されて、血液から尿を生成します。圧力がないことには糸球体を通り過ぎるだけで濾過することができません。実際は電気的に陰性に荷電しているため、圧力だけで濾過されているわけではないです。
①は出血や下痢、食欲不振、利尿薬の投与による全身循環している血液が少ないために糸球体内圧が維持できずに濾過装置が機能機能しない状態です。つまり、「ざるをただ素通りするだけ」状態です。
②は血液を循環させるためのポンプ(心臓)の押し出す力が弱い状態です。
2つとも共通しているのは、濾過するために必要な圧力が下がってしまった事が原因です。
糸球体内圧は自動調節能により一定に保たれていますが、さまざまな要因によって、恒常性が低下することがあります。
- 高齢者
- 動脈硬化
- 慢性腎不全
- 糖尿病
- ACE阻害薬
- ARB
- NSAIDs
腎(実質)性急性腎不全
腎前性と腎後性とは異なり、腎(実質)性急性腎不全は、腎臓自体が機能障害を起こしている状態です。
腎(実質)性急性腎不全の要因しては以下のようなものがあります。
- 血管疾患
- 糸球体疾患
- 間質性疾患
- 急性尿細管細胞壊死
腎(実質)性急性腎不全については薬剤性のものも多いため、今回は省略します。いずれ投稿すると思いますので楽しみにしていてください。
腎後性急性腎不全
腎後性急性腎不全は、腎臓より下流の尿管や膀胱に何らかの障害がある場合に起こります。要するに尿が出ていく通り道が塞がれている状態で、上流で血液が渋滞になっています。渋滞していると流れがいい方(輸出細動脈)へ流れていくので濾過ができていない状態です。
みなさんも、渋滞の道より流れている道を行きますよね。
急性腎不全の鑑別
腎前性、腎後性急性腎不全は、適切な治療を行わないと腎(実質)性急性腎不全へ移行、やがて慢性腎不全となります。適切な治療を行うには急性腎不全の原因を鑑別する必要があります。
腎後性 → CT、エコーを実施して、膀胱や腎盂、尿管の拡張の存在を確認します。
腎(実質)性、腎前性 → 脱水の存在、使用薬剤、尿初見(尿量、タンパク、血尿)を確認します。
また臨床検査としてFENaが用いられます。
分画ナトリウム尿中排泄率(FENa)
腎前性と腎(実質)性の鑑別に用いるマーカーとしてFENaがあります。
FENaが1%未満で腎前性を疑います。ただし、ループ利尿薬はナトリウム排泄が過剰となるため、FENaは用いることができません。
その場合は分画尿素窒素尿中排泄率(FEUN)を用いて、FEUNが35%未満の場合は腎前性が疑われます。FEUNについては、今回は省略します。
腎前性急性腎不全
腎前性の場合は脱水を考えるとわかりやすいです。脱水状態では尿中への水分の排泄を低下させようと、水分とNaの再吸収が亢進、つまり血液中に保持します。
- 尿浸透圧が上昇(尿が濃くなる)
- 尿中クレアチニン濃度が上昇(水分が少ないため)
- 尿中ナトリウム濃度が低下
腎(実質)性急性腎不全
腎(実質)性は、腎臓そのものの機能が低下しているので、水分とNaの再吸収が低下します。
- 尿浸透圧は等張
- 尿中ナトリウム濃度が上昇
最後に、尿所見あまり見てなかった!
正直、尿所見ってあんまり見てなかったなと反省しました。
血液検査のデータはBUN、CRE、eGFRはよく確認して、「あっ腎機能悪くなっている!」って事は多いけど、腎前性なのか、腎(実質)性なのかなんてあまり意識していないことが多いと思います。薬剤性を疑うにもどうゆう機序で起こる腎障害なのか、果たしてその機序はどの急性腎不全にあたるのか考えて介入していく必要があると感じました。
さあ、臨床で生かして行こう!!
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