近年、「心不全パンデミック」という言葉もちらほら聞くようになりました。
この言葉からも心不全のコントロールが人類において重要である事を強く感じます。
そんな中、心不全治療薬は新しい作用機序の薬剤がいろいろ使えるようになってきました!
その中の一つとしてコララン®(イバブラジン)という薬剤があります。
コララン®が心不全にどのような影響を与えるか楽しみです。
ではコララン®とはどのような薬剤なのか一緒に確認していきましょう!
名称
イバブラジン塩酸塩:Ivabradine Hydrochoride(コララン:CORALAN®)
名称の由来
心拍数を減少させる薬剤をイメージ「COR(英語で心臓を意味するheartより)」
+
「LAN(フランス語で遅いを意味するlentより)」
コララン!なんか可愛らしい名前ですね!
名前の由来っておもしろいですよね。ぜひインタビューフォームを調べてみてね。
特徴
- 洞結節に存在するHCNチャネルを遮断する新規作用機序の慢性心不全治療薬。
- 心収縮能に影響を与えずに心拍数を低下させることで予後を改善する。
- 代表的な副作用として、徐脈、心房細動、光視症および霧視などがある。
作用機序
コララン®の薬理作用はHCNチャネル遮断です。
コララン®は心臓のHCN4チャネルを阻害することでIfを抑制します。
Ifが抑制されることで、拡張期脱分極相における活動電位の立ち上がり時間を遅延させて心拍数を減少させます。
HCN:Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated
過分極活性化環状ヌクレオチド依存性
If:funny current 過分極活性化陽イオン電流
- 電気刺激が自発的に発生する洞結節の自動能形成に寄与する電流のこと。主にHCN4チャネルにより形成される。
用法用量
洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全に適応があります。
ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けた患者に限定されています。
心不全初回からの導入はできないということです。
投与量は、イバブラジンとして1回2.5mgを1日2回食後経口投与となっています。
目標となる安静時心拍数が維持できるように必要に応じていきます。
1回投与量は2.5、5、7.5mgのいずれかで増量します。
増量する際は、2週間以上の間隔で段階的に用量を増減していきます。
用法用量に関する注意点
目標とする安静時心拍数は50〜60bpmとなります。
安静時心拍数が60bpmを超える場合は段階的に増量します。
安静時心拍数が50bpmを下回るまたは徐脈に関連する症状が認められた場合は段階的に減量します。
1回2,5mg1日2回食後投与で継続して安静時心拍数が50bpmを下回るまたは徐脈に関連する症状が認められた場合は中止します。
再開する場合は休薬前の用量を超えない用量で再開します。
食後の理由
添付文書には「食後」と明記されています。
食後に理由としては、以下の理由がインタビューフォームに記載があります。
- 食後投与により血漿中におけるイバブラジンの曝露量が上昇した。
- 併用を想定されるβ遮断薬(カルベジロール)は食後内服である。
- 用法が異なると服薬コンプライアンスに影響する事を考慮した。
カルベジロールの添付文書を確認すると、慢性心不全の場合は1日2回食後投与でした。狭心症、頻脈性心房細動では経口投与としか記載がなかったよ。
臨床試験
SHIFT試験:海外二重盲検ランダム化比較試験
対象患者
SHIFT試験の対象患者は以下の条件となっています。
結果
安静時心拍数の変化
コララン®の心不全進行抑制作用は心拍数の低下によるものです。
SHIFT試験の結果は、
プラセボ群では投与開始から28日後で-4.6bpm、最終評価日には-4.1bpmとなっています。
一方、コララン®投与群では投与開始28日後でベースラインから-10.9bpm、最終評価日では-12.0bpmとなっています。
心血管死または心不全増悪入院の発現割合
SHIFT試験の主要評価項目である、「心血管死と心不全増悪による入院」についてです。
プラセボ群が28.7%に対して、コララン®投与群では24.5%となっています。
ハザード比(HR)0.82,(95%信頼区間0.75〜0.90, P<0.0001)と有意差をもって減少している事が示されています。
心血管死と心不全増悪の複合エンドポイントではありますが、
この差は主に心不全増悪入院の減少の影響が大きいです。
(HR 0.74%, 95%信頼区間0.66〜0.83, P<0.0001)
結論
SHIFT試験から以下のように結論づけられています。
- 洞調律のHFrEF患者では一定以上の頻脈はリスクである。
- 心拍数を低下すること自体が治療ターゲットになる。
コララン®が心不全治療に対して有効な選択肢となっていくことがわかります。
副作用
心房細動
動悸などの症状が現れた場合や心拍数不正が認められた場合は心電図検査を行います。
心房細動が発現した際はコララン®を中止することとされています。
徐脈
コラランの心拍数低下作用によって徐脈が発現する可能性があります。
定期的な心拍数測定が必要です。
徐脈が認められた場合はコラランを減量もしくは中止します。
光視症、霧視
網膜のHCNチャネルを遮断することに起因とされています。
自覚症状は以下の通りです。
- 視野の限られた領域で一過性に眩しい光を感じる。
- 光輪現象、霧がかかったような見え方がする。
コララン導入から3ヶ月以内に発現しやすいので、コララン導入時に患者さんへ適切な指導を行ってください。
特に運転などの危険を伴う作業を行う際には十分に注意することを説明しましょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ここ数年で心不全に対する治療薬の選択肢が増えてきました。
そんな中、コララン®は心不全における重要な選択肢の一つとして、心不全の進行抑制に貢献すると考えます。
最後にコララン®の特徴を振り返って終わりにしたいと思います。
- 洞結節に存在するHCNチャネルを遮断する新規作用機序の慢性心不全治療薬。
- 心収縮能に影響を与えずに心拍数を低下させることで予後を改善する。
- 代表的な副作用として、徐脈、心房細動、光視症および霧視などがある。
参考
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