エベレンゾの特徴はこれ!
●新規作用機序の腎性貧血治療薬
●HIFの分解を抑制する事で間接的に赤血球を上昇させる
●腎性貧血に対する治療薬の選択肢となる
名称の由来
EVRENZO = Everest(エベレスト)+enzyme inhibitor(酵素阻害薬)
作用機序
簡単にいうとHIFーPH阻害薬
HIF-PH : hypoxia inducible factor – prolyl hydroxylase
日本語では「低酸素誘導因子−プロリン水酸化酵素」
これを阻害する薬剤がエベレンゾ(ロキサデュスタット)です。
分解して考えていきましょう。
HIF(低酸素誘導因子)とは
低酸素状態で誘導される転写因子のことで(字のまんま)、低酸素に対して恒常性を保つために働きます。
HIFのサブタイプにHIF−α、HIF−βがあり、これらが結合することでDNA転写因子として働きます。
転写が活性化されると以下の作用を示します。
- EPOの産生促進
- 鉄の吸収促進
- 赤血球へのトランスフェリンの取り込み促進
これらの働きによって低酸素状態でも効率よく各細胞へ酸素を供給することができます。
HIF-PH(低酸素誘導因子−プロリン水酸化酵素)とは?
HIFーPHはHIFを分解する酵素です。
HIFは通常の酸素量の場合は産生されていますが、通常はすぐにHIF−PHによって速やかに分解されます。
HIF−PHを阻害するということは
エベレンゾ(ロキサデュスタット)はHIF−PH阻害薬です。
HIFの分解酵素を阻害することでHIFの作用を持続されて効果を示します。
HIFの作用である
- EPOの産生促進
- 鉄の吸収促進
- 赤血球へのトランスフェリンの取り込み促進
これらの作用が増強されることによって赤血球の分化・成熟が促進されます。
ちなみに、成分名の『ロキサデュスタット』の『デュスタット(-dustat)』はHIFーPH阻害薬のステム(stem)です。
エベレンゾ以外にも続々とHIF−PH阻害薬が申請されています。
用法用量
用法は、1日1回 週3回経口投与となります。
投与量については、EPO製剤で未治療の場合もしくは切り替えかによって開始用量が異なります。
●EPO製剤で未治療の場合は、
1回50mgで投与開始
●EPO製剤から切り替えの場合は、
1回70mgもしくは100mgで投与開始
開始後は患者さんの状態に応じて適宜増減となっており、最高用量は1回3.0mg/kgを超えないとなっています。
通常は、注射剤より内服薬の方が利便性があります。
しかし、透析回路から投与できる薬剤に関しては注射剤の方が確実に投与できる点からもメリットが大きいと感じます。
経口投与では患者さんも服薬コンプラアンスが重要になっています。
血液透析は通常週3回なので、透析日に内服するように患者さんに説明するとわかりやすいと思います。
今後は保存期に対して適応が通れば、ネスプを投与する代わりにエベレンゾを処方してもらうことも可能だと考えます。
ネスプの投与すると痛みを訴えることが多いので、投与中の痛みがどうしても辛いという方にも内服があることは朗報かもしれません。
ちなみに、透析患者における、透析前後でのエベレンゾの薬物動態に差はなかったとの記載があることから、内服タイミングは透析の前でも後でも大きな影響はないと言えます。
腹膜透析においても同様と記載があります。
投与する際の注意点
警告
添付文書を確認してまず目に止まるのは、『警告』の項目ですね。
本剤投与中に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれがある。本剤の投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、本剤の投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。血栓塞栓症が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
エベレンゾ添付文書
血液透析患者を対象として国内第Ⅲ相臨床試験におけるダルベポエチンアルファ群との比較で、血栓塞栓症関連事象が現れています。
血栓塞栓症 | 重篤な血栓塞栓症 | |
ロキサデュスタット投与群 | 11.3% | 8.2% |
ダルベポエチンアルファ投与群 | 3.9% | 2.6% |
相互作用
透析患者の多くは合併症があり複数の薬剤を内服していることが多いので、相互作用は要チェックですね。
リン結合性ポリマー(セベラマー塩酸塩、ビキサロマー)
同時投与では、エベレンゾのAUCおよびCmaxが低下したことが示されてる。
ロキサデュスタット単独群を1としたときのセベラマー同時投与群は0.34と約1/3となっています。
リン吸着薬投与1時間前後ではそれぞれ0.74、0.88と低下が軽減されます。
リン吸着薬は併用することが多いので、1時間の間隔を空けて内服するように指導すると良いです。
多価陽イオンを含有する経口薬剤(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムを含む製剤)
リン結合性ポリマーと同様ですが、酢酸カルシウムとの併用でエベレンゾのAUC、Cmaxの低下が確認されています。
同時服用(0.48)と比較して、1時間の投与間隔を空けることで1時間前(0.81)、1時間後(0.98)となっています。
HMG還元酵素阻害薬
エベレンゾとHMG還元酵素阻害薬(スタチン系)との併用で、スタチンのAUC、Cmaxが上昇する結果が出ています。
これはエベレンゾがOATP1B1/BCRPの基質となるために、スタチンの血中濃度が上昇すると考えられています。
まとめ
腎性貧血治療薬は今までネスプなどのEPO製剤しかありませんでしたが、新たな作用機序の薬剤の誕生で治療の幅が広がることは間違いないと思います。
今後保存期CKDへの適応拡大でさらにHIFーPH阻害薬の有用性が普及していくことでしょう。
参考文献
- エベレンゾ錠添付文書
- エベレンゾ錠インタビューフォーム
- アステラス製薬 HP
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